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月白 Geppaku
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渋苔 Shibugoke
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栗茶 Kuricha
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緑砂 Ryokusa
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【この作品は受注制作です。在庫がない場合は1〜2ヶ月お待ちいただく場合があります。お急ぎの場合はご注文前にお問い合わせページより在庫確認をお願いいたします→https://suzugama-otp.stores.jp/inquiry】
ご覧頂きありがとうございます、suzugamaの鈴原と申します。少しシーナリーシリーズに込められた気持ちについて綴っていきたいと思います。
開業以来、お皿については納得いくものが作れていないことで悩んでいました。包み隠さずに言いますと、どうしても高価なものになってしまうからです。「白の道具シリーズ」のお皿を数年作っていましたが、ロクロですとどうしても手間が掛かりそれなりの値段になっていました。
日常生活の中でお皿は雑に扱われることが多いと思います。人数分以上揃っていないといけませんし、お客様が来た時などは特にたくさんのお皿がシンクに溢れることになります。手を滑らせて割ってしまうこともしやすい食器です。ある程度枚数が必要で、収納のときも重ねやすく、配膳するときは持ちやすいことも必要です。普段遣いの食器としてはですが、わたしのように手作りでご提供するのは難しい分野だと思っています。
お皿を作らなくなってから数年、コロナ禍も落ち着いてきてイベント出展も再開しようかと話し合ってきた時に思いついたことが「もう一度普段使いのお皿に挑戦したい」ことでした。ポイントは、スピードアップと廃棄を減らすこと。無駄な工程を省きお求めやすい価格で並べようと決めました。
スピードアップについては「タタラ成形」という板状にした粘土を凸型に被せて成形する技法を使いました。手が慣れてくればロクロよりずっと速く作れるようになります。ロクロ技法で難しい乾燥途中の削り工程も省けるようになりました。粘土もタタラ技法に向いたサックリと軽い赤土をブレンドしています。
廃棄については陶磁器では大きな問題で、きれいに作れば作るほどアラが目立って気になるという、作り手にとってはやればやるほど自分の首を締めるような問題です。土岐市の廃棄物処理場に山と積まれた陶磁器を、可能であれば一度見ていただきたいです。
この点にについては、敢えて不安定な釉薬を作るために実験を繰り返しました。欠点とされるようなことも味として多くの方が受け入れていただけるように、そもそも強い味わいを持った調合を目指し、さらに歪みやすいタタラ成形の生地にすることで、安価な一点物としてご満足いただけるうつわになったのではないかと思います。
結果として昔ながらのプリミティブな技法と、味わい深い新しい釉薬という2つの特徴に落ち着きました。
私は美術系の大学で陶磁器を学びましたが化学方面が好きだったこともあり、釉薬研究は無限の可能性が広がってとても好きな時間です。機能的なところばかりを見れば磁器やボーンチャイナになってしまいますが、釉薬と粘土が生み出す色合いや表情を愛でながら育っていく様子を愉しむのは陶器ならではの楽しみです。
これからも新しい釉薬を追加していくつもりです。新しいものはイベントでの販売から始めていますので、お立ち寄りいただけると幸いです。
→https://www.instagram.com/suzugama/?ref=badge
サイズ:φ25×2.5cm ※手作りのため誤差があります
電子レンジ○
食洗機○
オーブン×
素材:陶器
●素材について●
シーナリーシリーズは歪みのあるタタラ成形と安定しにくい釉薬を用いています。ムラ・歪み・貫入・ピンホール・鉄粉・窯変など量産品では出回らない特徴を味わいとして楽しんでいただきたいと考えています。使用上大きく支障のあるものは検品で落としますが、ご理解の上お使いいただきますと幸いです。
>ムラ
うつわの表面に現れるムラには多用な原因があります。釉薬に含まれる成分の比重の違いによるムラ、それに伴う釉掛け作業時のムラ、焼成時の流れによるムラ、生地が透けることによるムラ、窯の中での火の当たり方によるムラなどがあります。
>歪み
粘土を板状に成形してから型に押し付けてうつわの形にしていく「タタラ成形」では、歪みが生じやすい特徴があります。また、うつわは焼成することにより10%以上縮みます。成形時の粘土の「目」が縮む際に歪みとなって現れます。
>貫入
陶器は粘土質の「生地層」とガラス質の「釉薬層」の二層構造です。生地層は形を保つ骨材として機能し、釉薬層は汚れにくくするコーティングとして機能します。焼成すると窯の中で一旦膨らみ、冷める時に縮み始めます。この際生地層より釉薬層の方が縮むので、釉薬層のみにクラックが入り、このことを貫入と呼びます。うつわが水を含むと膨張し乾燥すると収縮しますので、使っているうちに貫入は徐々に増えていきます。貫入が汚れで染まったりすると最初は気になるかもしれませんが、愛着も同時に育てていく過程として楽しんでいただけると幸いです。
>ピンホール
粘土や釉薬は焼成する中で様々な気体を放出します。焼成を終える時に気体を放出しその跡が残ったものがピンホールです。
>鉄粉
粘土や釉薬のなかには様々な役割を持った成分が入っており、金属類が入っていると色濃く様々な色に発色します。その中でも大き目に発色した物を鉄粉と呼びます。「緑砂」では敢えて大きな鉄粉を入れて味わいを強めています。
>窯変
suzugamaではガスの窯を使用しており、直火で1200度以上にもなる窯の中では様々なことが起こっています。火が当たる場所と当たらない場所、酸素が多い場所少ない場所、温度が高い場所低い場所などなど。対流する火の中で、変化に敏感な釉薬は仕上がりに大きな違いが現れます。同じものをたくさん作らなければならない量産品では使いにくいそんな釉薬も、ひとつひとつ違う美しい表情を見せます。一期一会の出会いも陶器ならではの楽しみだと思います。